「最初に読むべき入門書が存在するようなスキル」として定義する、と言ってもよい。
これがないと、ビジネスリーダーの役割、と言われても一挙にそこに到達するのが困難だし、そこにたどり着くために、まず何を身につければよいかがわからない。
まず、「一芸型能力定義」を、もう一度考え直してみよう。
ビジネスリーダーは、「情報の加工統合〜意思決定」「人と組織を動かす〜結果を出す」という仕事を成し遂げるために、何を用いているのだろう。
もちろん、知識は除いてのことだ。
ものすごく単純化すると、主として「頭」と「心」を使っているわけだ。
もちろん「体」も使うし、「時間」も使うのだが、スキルとして考えると、「情報を加工・統合し、より正しい意思決定をする」、そして「人と組織を動かし、結果を出す」ための「頭と心の使い方」が鍵になる。
「正しい意思決定をする」という仕事では、主として「頭の使い方」が重要だし、「組織を動かし、結果を出す」という仕事においては、どちらかと言えば、「心の使い方」が必要となる。
したがって、ビジネスリーダーの仕事の遂行に必要な「頭の使い方」と「心の使い方」を、習得可能なスキルとして定義してやれば、いわば「一芸型」の発展形ができあがる。
こういったスキル系については、多くの入門書があるので、それを読んで基本を理解する。
まず、入り口として基本スキルを身につけるのだ。
そして、日常の仕事の中で(すなわち第三の条件)、ビジネスリーダーの役割と到達目標(第一の条件)を意識しながら、磨いていくのが効果的だ。
「頭の使い方」、「心の使い方」と言っても、実際には両方を同時に使うことが多いのだが、そこをあえて割り切って、個別に考えてみよう。
一瞥してわかるように、「頭の使い方」系スキルは、企画力という能力を獲得するためにまず身につけるべき基本技の一群であると同時に、一部にはできあがった企画を周囲に理解してもらい、人を動かすための基本技も含んでいる。
その中でも、ロジカル・シンキング、図解の技術、モデル構築というスキルは基本中の基本として、ビジネスパーソンがキャリアの早い段階で身につけておくことが望ましいものだろう。
また、この三つは「構造化」というキーワードで密接に結ばれている。
「構造化」ということを頭におけば、どれかひとつを学ぶことが、他の二つを身につけるのにも役に立つ。
プロ野球のピッチャーは、大抵ゴルフがうまい。
おそらく、「身体の使い方」に似た部分があるからだろう。
余談だが、サッカーのプロ選手のゴルフの腕前は、千差万別らしい。
ただし、大抵はアプローチの距離感が優れているとか。
あるJリーガーは「三○メートル先の相手の足元にパスを出すのに比べれば、止まっているゴルフボールをある距離感で打つのは、簡単。
でも、ドライバーでロングヒットするには、(サッカーとは違った)まったく別の感覚が必要だ」と語っていた。
プロアスリートとは言っても、自分の得意技が生きるスポーツばかりではないらしい。
ロジカル・シンキング、図解の技術、モデル構築、という三つのスキルの場合、「構造化」という共通の「頭の使い方」があり、野球のピッチングとゴルフスィングのように、相乗効果が期待できるのだ。
日本語という言語の大きな特徴のひとつは、論理の暖昧さを許容することだ。
主語を省き、自分の意見なのか、他の誰かの意見なのか、あるいは「みんなの」意見なのかを暖昧にする。
断定的な言い方を避け、聞き手に対して、話し手の意見を押しつけない。
ビジネスの場でも、「まあ、何とかよろしくご配慮ください」「前向きに考えさせていただきます」といった言い方をよくする。
こういった、英語に訳そうとするとニュアンスの違いに頭を抱えてしまうような表現をうまく使えて初めて、一人前のビジネスパーソンとして認められるくらいだ。
これらの表現の是非はともかくとして、日本語で思考し、コミュニケートすることを学んできたわれわれは、欧米諸言語で育ってきた人々と比べて、論理性の点で訓練が不足していることは、どうも間違いなさそうだ。
コンサルタントの場合、日本人は入社当初の段階で、論理の厳密性を身につけるのに相当苦労する。
欧米で高等教育を受けた連中は、ロジカル・シンキングの基本的な部分は入社前に身につけている、と言うか、できて当たり前なのとは大違いだ。
もちろん彼らとて、もう一段鍛え直さないと、プロとしては使い物にならないのだが、日本語で教育を受けた日本人は、もう一歩手前から訓練が必要となる。
通常のサラリーマン・サラリーウーマンの場合でも、何らかの企画をしていく上で、首尾一貫したロジックで考えを展開していくという能力がどうしても必要となる。
さらに、できあがった企画を周囲の人に理解してもらい、実行してもらうためには、他人が容易に理解できる論理構成を作れるかどうかが鍵となる。
実行のためのロジカル・シンキングというのは結構重要だ。
社員数人の小規模な会社のオーナー社長なら、自分の直感に頼って意思決定をして、「理屈はとにかく、これをやるんだ」と号令をかければよいかもしれない。
しかし、大規模な組織を率いるリーダーは、部下から感情と論理の両面で納得を得なければ何も始まらない。
組織人という人種は、理解できないことは実行してくれないものだ。
「情報を加工・統合し、意思決定する」上でも、「人と組織を動かし、結果を出す」上でも、ロジカル・シンキングは不可欠なスキルだと言えよう。
ロジカル・シンキングを身につける第一歩としては、ロジカル・シンキングそのものを扱ったさまざまな入門書のうち、どれかを読んでみるのが一般的だ。
私自身は、コンサルタントになってから読んだバーバラ・ミントの『考える技術・書く技術』(D社)や、K著『理科系の作文技術』(T)が役に立った。
ただし、本来ロジカル・シンキングというのは、プラトン、アリストテレス以来の欧米文化の根幹をなすもの。
したがって、ビジネス関連の書籍を読むだけでなく、哲学、論理学、数学といった諸分野を学ぶことで、スキルとして身につけ、鍛えていくことが可能だ。
もし、あなたが大学時代にこういった分野を勉強したことがあったり、今でも興味を持っていたりするのならば、そちらから入るというルートで学び始めてみてはいかがだろうか。
大学時代の教養課程の教科書でも、一般向けに書かれた入門書でもいい。
まず、なじみがあったり、面白そうだと思ったりする本を一冊、手に取ってみよう。
過去の蓄積を徹底的に活用し、さらに自分の興味ある分野について学んでいくのが、スキルを効果的かつ効率的に身につける王道なのだから。
次に、図解の技術について、説明してみよう。
図解の技術に関しては、多くのベストセラーが出ているので、お読みになった方も多いだろう。
複雑な事象も図解してみると、さまざまな事柄の間の関係が明確になる。
ややこしくて、こんがらがったことも、図にしてしまえば、単純な形で把握できる。
理解を容易にするというのが、このスキルのもたらす大きなメリットだ。
また、図を使えばさまざまな概念操作が可能となる。
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